課題

この支援先は年間100名以上を採用する成長企業で、人事チームは応募書類の選考に月100時間以上をかけていました。この種の業務では、職種ごとに求める経験やスキルが違う中で、履歴書と職務経歴書を1通ずつ読んで、求める条件に合うかを見ていく、という作業になりがちです。

応募が増えるほど、書類を読む時間が人事チームの時間の多くを占めます。また、読む人によって見るところが違うと、同じ職種でも評価にばらつきが出やすくなります。

作った仕組みと画面イメージ

作った仕組み

  • 職種別の評価基準 — 職種ごとに、求める経験やスキルを評価基準として定義する
  • 書類の整理と点数化 — 履歴書・職務経歴書を、AIが評価基準に沿って整理し、点数を付ける
  • 候補者の要約と面接の質問 — 有望な候補者の要約と、面接で確認する質問をAIが作る

合否を決めるのは人事の担当者です。AIの点数と要約は、判断の材料として使います。

書類選考の画面イメージ。法人営業の中途採用について、今週の応募・担当者が判定済み・判定待ち・面接の質問を準備済みの件数が並び、応募者の一覧には評価基準ごとの点数と合計、担当者が入力した合否が表示されている。右側に、応募者Cについて基準ごとの整理と書類からの引用、記載がない項目、面接で確認する質問3つ、担当者が選ぶ合否の欄が並んでいる
書類選考の画面の例。職種ごとの評価基準に沿ってAIが整理した点数と根拠、面接で確認する質問を並べています。合否の欄は担当者が入力します。画面はイメージです(データは架空)

AIが出した書類の整理(例)

1人分の書類を評価基準に沿って整理すると、次のような一覧になります。基準ごとに、書類のどの記述を根拠にしたかと、面接で確かめることを並べます。

表は横にスクロールできます

評価基準(法人営業の例)AIが書類から整理した内容(例)面接で確認する質問(例)
法人営業の経験法人向けの営業を約5年。中小企業の新規開拓が中心新規開拓で、最初の接点をどう作っていたか
提案の規模年間契約の提案の経験あり。金額の記載なし担当した提案の規模と、自分が担った範囲
数字の管理営業目標と達成の状況を、表で管理していた記載あり目標に届かない月に、何を変えたか
チームでの役割後輩2名の育成を担当育成で工夫したこと
新しい商材への対応記載なし(「経験がない」とは判断しない)新しい商材を覚えるときの進め方

※架空の応募書類を例にした一覧です。合否は人が判断します。

基準ごとに根拠の引用が付いていると、担当者は書類のどこを読めばよいかが分かり、点数に納得できないときも理由をたどれます。記載のない項目は「記載なし」と分けて示し、面接で確かめる質問に回します。面接の質問は、点数の低い項目だけでなく、点数の高い項目の裏づけを取るためにも使います。

データの流れ(入力・AI・人の分担)

表は横にスクロールできます

段階と入力AIがやること人がやること
基準づくり入力: 職種ごとの業務内容と求める経験・スキルなし職務に関係する項目だけで、評価基準を定義する
整理と点数化入力: 履歴書・職務経歴書のテキスト評価基準に沿って整理し、点数と理由を書く点数の理由を確かめる
要約と質問入力: 整理の結果有望な候補者の要約と、面接で確認する質問を作る質問を選び、面接の準備をする
判断入力: AIの整理と応募書類判断しない書類を読んで合否を決める

※ 人の分担は、この種の仕組みでの一般的な例です。

効果

書類選考にかかる工数は、約60%減りました。

※効果は業務内容・体制により異なります。

公正な採用選考のための注意

採用では、AIに合否を決めさせず、最終判断は人が行うことを前提にします。厚生労働省は公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことを挙げています。AIに渡す評価基準には職務に関係する項目だけを入れ、点数の理由をAIに書かせて人が確かめられるようにします。応募書類は個人情報のため、使うAIサービスの契約内容も確認しておきます。

つまずきやすい点

  • 過去の採用の結果をそのまま例としてAIに渡すと、過去の選考の偏りを引き継ぐおそれがあります。評価基準は、職務に必要な経験とスキルから組み立てます。
  • 点数だけを見て書類を読まなくなると、基準に入っていない強みを見落とします。点数は判断の材料にとどめ、判断は書類と面接で行います。
  • 書類の書き方は人によって違います。記載がないことを「経験がない」と決めつけず、面接で確かめる質問に回します。
  • 職種が変われば、評価基準も変わります。新しい職種の募集を始めるときは、基準を作り直してからAIに渡します。
  • AIに渡すのは選考に必要な項目だけにし、選考が終わった書類の保存期間と、見られる人を社内で決めておきます。

担当者より

この支援で最も気を配ったのは、AIの役割を「合否を決めること」ではなく、「書類を整理して、人の判断を助けること」に置くことでした。採用は、応募者の人生にかかわる判断です。点数はあくまで材料で、合否を決めるのは人事の担当者です。

評価基準を職種ごとに言葉にする作業には、手間がかかります。それでも、基準が言葉になればAIに渡せるだけでなく、読む人による見方の違いもそろえやすくなります。評価基準に職務に関係する項目だけを入れることは、公正な選考の基本でもあります。仕組みづくりの前に、基準づくりに時間をかける価値があると考えています。

株式会社クロスタ 担当コンサルタント

自社で始めるなら最初の一歩

最初は、実際の応募書類を使わずに、評価基準を言葉にするところから始めます。基準が言葉になれば、AIに渡せるだけでなく、担当者どうしで見るところをそろえる材料にもなります。

  1. 募集中の職種を1つ選び、求める経験・スキルを5項目ほどの評価基準として書き出す
  2. 架空の職務経歴書を数通用意し(AIに作らせてもかまいません)、基準に沿って整理させる
  3. 担当者が読んだときの見立てと比べ、基準の言葉が足りない点と、人が確かめるべき点を直す
次の評価基準に沿って、この職務経歴書を整理してください。 評価基準: 1. 法人営業の経験 2. 提案の規模 3. 数字の管理 4. チームでの役割 5. 新しい商材への対応 ・基準ごとに、書類のどの記述を根拠にしたかを引用する ・書類に根拠となる記述がない基準は「記載なし」と書く ・面接で確認する質問を3つ作る 合否の判断はしないでください。職務に関係のない事柄には触れないでください。