課題
この支援先では、ユーザー数の増加にともなって、サポートへの問い合わせが月数百件規模になっていました。サポート担当の負担が増え、返信が遅れることが課題になっていました。この種の業務では、問い合わせを1件ずつ読み、内容を見分け、過去の対応やFAQを探して返信を書く、という作業になりがちです。
問い合わせの中には、FAQや過去の対応で答えが決まっている定型のものも含まれます。定型の問い合わせにも毎回一から返信を書いていると、個別の調査が必要な問い合わせに時間を回しにくくなります。
作った仕組みと画面イメージ
作った仕組み
- 履歴とFAQの読み込み — 過去のサポート履歴とFAQの文書をAIに読み込ませ、回答の根拠にする
- 問い合わせの分類 — 届いた問い合わせの内容を、AIが自動で分類する
- 返信の下書き — 定型の問い合わせには、AIが返信の下書きを作る。送信の前に人が承認する
画面は次のようなイメージです。問い合わせの一覧に分類と下書きの有無が並び、選んだ問い合わせでは、返信の下書きと、根拠にした文書を確かめてから送信します。

AIが分類した問い合わせの一覧(例)
AIの分類と対応は、次のような一覧になります。下書きを作るか、担当者に回すかの分かれ目は、根拠になるFAQや過去の対応があるかどうかです。
表は横にスクロールできます
| 問い合わせ(要約) | AIの分類と対応 | 人がやること |
|---|---|---|
| パスワード再設定のメールが届かない | ログイン。FAQの手順をもとに返信を下書き | 下書きを確かめて承認する |
| 先月分の請求書を再発行してほしい | 請求・契約。過去の対応をもとに返信を下書き | 契約の内容を確かめて承認する |
| 利用者を3名追加する方法 | 操作方法。FAQの手順をもとに返信を下書き | 手順が今の画面と合っているかを確かめて承認する |
| CSVの取り込みでエラーが出る | 不具合の疑い。分類のみで、似た過去の問い合わせを表示 | 再現を確かめて回答する |
| 権限を部署ごとに分けたい | 機能の要望。分類のみ | 回答し、開発の担当に共有する |
| 外部の会計サービスとつなぎたい | 連携。根拠になる文書が見つからないため、下書きを作らず担当者へ | 調べて回答し、必要ならFAQに足す |
※架空の問い合わせを例にした一覧です。分類の種類は、サービスとサポートの体制に合わせて決めます。
分類の種類は、最初から細かく分けすぎないほうが扱いやすくなります。下書きを作るか担当者に回すかを決められる粒度から始め、件数の多い分類を後から分けていきます。
データの流れ(入力・AI・人の分担)
表は横にスクロールできます
| 段階と入力 | AIがやること | 人がやること |
|---|---|---|
| 準備入力: 過去のサポート履歴、FAQの文書 | 読み込んで、回答の根拠にする | 読み込ませる文書を選ぶ |
| 分類入力: 届いた問い合わせ | 内容を自動で分類する | 分類が違うものを直す |
| 下書き入力: 定型の問い合わせ | 履歴とFAQをもとに、返信の下書きを作る | 下書きを確かめ、承認してから送る |
| 個別の対応入力: 定型でない問い合わせ | 分類まで | 調べて回答する |
※ 人の分担は、この種の仕組みでの一般的な例です。
問い合わせの分類から要望の優先順位づけまでの流れは、当社のSaaS・IT企業向けの業務デモでも試せます。
効果
問い合わせの一次対応にかかる時間は、平均70%短縮しました。定型の問い合わせは、担当者が一から返信を書く作業から、AIの下書きを確かめて承認する作業に変わっています。
※効果は業務内容・体制により異なります。
つまずきやすい点・注意点
- 注意したいのは、FAQにない質問への回答です。根拠となる文書が見つからない問い合わせはAIに答えさせず、担当者に回すルールにしておくと、誤った案内を防げます。
- FAQや過去の対応が古いと、AIは古い手順で下書きを作ります。機能や料金の変更があったら、読み込ませる文書も更新します。
- 問い合わせには、ユーザーの氏名やメールアドレス、契約の情報が含まれます。AIに渡す項目を必要なものに絞り、使うサービスでのデータの扱いを自社の契約形態に照らして確認します。
- 返信の下書きは、丁寧でも質問の答えになっていないことがあります。承認の前に、質問に答えているか、案内した手順が今の画面と合っているかを確かめます。
- 解約や返金など、お客様との関係にかかわる問い合わせは、定型であっても担当者が内容を読んでから返信する対象にしておきます。
- 承認が形だけにならないように、下書きを直した件数と理由を記録し、FAQや分類の見直しに使います。
自社で始めるなら最初の一歩
最初は、過去の問い合わせで分類だけを試すところから始めます。担当者が付けた分類と比べると、分類の種類が足りているか、FAQで答えられる問い合わせがどれくらいあるかが分かります。
- 先月の問い合わせを50件ほど書き出し、AIに分類させて、担当者の分類と比べる
- FAQで答えられる問い合わせについて返信の下書きを作らせ、担当者の返信と見比べる
- 根拠の文書が見つからなかった問い合わせを一覧にし、FAQに足す内容を決める
担当者より
この支援で外さなかったのは、送信の前に人が承認する形です。問い合わせへの返信は、お客様にそのまま届く言葉です。AIが下書きを作れば時間は短くなりますが、誤った案内は信頼を損ねます。下書きと承認を分けることで、速さと正確さの両方を保てると考えました。
もう1つ大切にしたいのは、AIが答えられなかった問い合わせの扱いです。根拠の文書が見つからない問い合わせは、FAQが足りていない場所を教えてくれます。担当者が答えた内容をFAQに足していけば、次に同じ質問が来たときには、下書きで答えられるようになります。
株式会社クロスタ 担当コンサルタント