課題(ヒアリングで分かったこと)
1つ目は、報告のための手作業です。各担当者が自分の活動を報告し、管理者がそれを日次・週次・月次の結果にとりまとめる。どちらも手作業で、担当者と管理者の両方の時間を使っていました。数字がそろうのは締めの後になるため、伸び悩んでいる担当者に気づいて手を打つのも遅れがちです。
2つ目は、商談の振り返りです。どの言葉が相手に響いたか、どこで反応が変わったかは、担当者の記憶とメモに残るだけになりやすく、チームの財産になっていませんでした。
作った仕組みと画面イメージ
作った仕組み
- 活動の見える化 — 架電管理ツールで、担当者ごとの架電・アポ・商談を画面で見られるようにする
- 結果の自動収集 — 日次の報告と週次・月次の結果を自動で集める
- 商談録画の分析 — 刺さったワードと、ネガティブになった瞬間をAIが抽出する
- トークのナレッジ — 抽出したトークを社内に蓄積する
画面は次のようなイメージです。1枚目が担当者別の活動、2枚目が商談の分析です。


AIが抽出したトークの一覧(例)
録画の分析では、発言を「刺さった」「ネガティブ」「懸念」などに分け、場面をつけて一覧にします。チームで使うかどうか、どう使うかは人が決めます。
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| 種類と場面 | 発言(要約) | チームでの使い方(人が決める) |
|---|---|---|
| 刺さった導入の進め方 | 「御社の書類を3件いただければ、その場で下書きを作ります」 | 初回商談の締めで使うトークとして共有する |
| 刺さった不安への回答 | 「単価は過去の実績から自動で引き、最後は人が確認します」 | 「任せきりにならないか」という不安への答え方として共有する |
| 刺さった事例の紹介 | 同じ業種の事例を、作業の流れに沿って説明した | 業種ごとの事例の説明を、流れで話す形にそろえる |
| ネガティブ導入の時期 | 「来期に検討します」のあと、相手の発言が減った | 時期の話の前に、今期に試せる小さな範囲を示す |
| ネガティブ機能の説明 | 機能の説明が続いた時間帯に、質問が出なくなった | 説明を短く区切り、相手の業務について質問をはさむ |
| 懸念社内の手続き | 「稟議に通る資料があるか」 | 稟議に使える比較表をひな形として用意する |
※表の発言と使い方は、一覧の形を示すための架空の例です。
データの流れ(入力・AI・人の分担)
記録は普段の業務の操作から取り、集計と報告は仕組みに任せ、人は数字と抽出されたトークを見て支援に動く、という分担です。
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| 段階と入力 | 仕組み・AIがやること | 人がやること |
|---|---|---|
| 記録入力: 架電の結果、獲得したアポ、実施した商談 | ツールに入力した時点で、担当者と日時つきのデータとして残る | 普段の業務としてツールに入力する(報告のための転記はしない) |
| 集計入力: 記録されたデータ | 担当者別・日別に、架電数・アポ数・商談数とその率を集計する | 何を「アポ」「商談」と数えるか、定義を最初にそろえる |
| 報告入力: 集計の結果 | 日次・週次・月次の結果を自動で集め、報告の形にする | 数字の背景を担当者に聞き、同行やトークの見直しなど支援の打ち手を決める |
| 録画の分析入力: 商談の録画 | 文字起こしをして、刺さったワードとネガティブになった瞬間を抽出する | 録画の前に相手の了承を得る。抽出の結果を確かめる |
| ナレッジ化入力: 抽出したトーク | 種類と場面ごとに蓄積する | チームで使うトークを選ぶ |
効果
日次・週次・月次の報告は、担当者と管理者の手作業から自動収集に変わりました。数字が締めを待たずにそろうため、管理者は報告のとりまとめではなく、数字を見て担当者を支援することに時間を使えます。商談の録画は分析とナレッジの蓄積が回り続け、顧客に刺さったワードやネガティブになった瞬間が、担当者個人ではなく社内に貯まっています。
※効果は業務内容・体制により異なります。
労務・個人情報の注意(監視にしないために)
社員の活動データを集めるときは、目的を決めて社員に明示し、事前に周知し、集める範囲を業務に必要なものに絞り、その数字だけで評価を決めないことが基本です。公的な資料では、次のように整理されています。
表は横にスクロールできます
| 観点 | 公的な資料での考え方 | 出典 |
|---|---|---|
| 目的の明示 | モニタリングの目的をあらかじめ特定し、社内規程等に定めて従業者に明示する | 個人情報保護委員会 Q&A(Q5-7) |
| 事前の通知 | ビデオカメラ・コンピュータ等によるモニタリングを行う場合は、実施理由・実施時間帯・収集される情報内容等を事前に労働者へ通知する | 厚生労働省 行動指針 第2の6(4) |
| 労働組合等との関係 | 重要事項を定めたら従業者に周知し、労働組合等に事前に通知・協議することが望ましい(Q&A)。行動指針では、原則として事前に通知し、必要に応じて協議するとしている | 行動指針 第4の1、Q&A(Q5-7) |
| 範囲の限定 | 個人情報の処理は、収集目的の範囲内で、業務の遂行上必要な限りにおいて行う | 行動指針 第2の1(2) |
| 評価への使い方 | 原則として、コンピュータ等による自動処理やモニタリングの結果のみに基づいて、評価や雇用上の決定を行わない | 行動指針 第2の6(6) |
| 運用のルール | 実施の責任者と権限を定め、ルールを運用者に徹底し、ルールどおりに行われているかを確認する | Q&A(Q5-7) |
※出典: 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A Q5-7(従業者のモニタリングを実施する際の留意点)」、厚生労働省「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(いずれも2026年9月29日に確認)。行動指針は個人情報保護法の制定前に研究会の考え方としてまとめられたもので、厚生労働省のページにも現在の指針を参照するよう注記があります。就業規則や社内規程への定め方は、社会保険労務士・弁護士にご確認ください。
営業の活動データに当てはめると、導入前に次の4点を決め、社員に説明しておくことになります。
- 目的: 何のために集めるか(報告の手作業をなくす、支援が必要な担当者を早く見つける など)
- 範囲: 何を集めるか(架電・アポ・商談の件数と結果。業務と関係のない操作や私的な情報は集めない)
- 見る人: 担当者本人・上長・管理者のうち、誰がどこまで見られるか
- 評価への使い方: 件数だけで評価を決めず、面談で背景を聞く材料として使う
つまずきやすい点
- 報告のための入力が増えると、記録が後回しになり、数字が実態とずれます。記録は、電話をかける・アポを登録するといった業務の操作そのものから取るようにします。
- 件数の定義(何をアポと数えるか、資料請求を含めるか)が担当者ごとに違うと、比べても意味がありません。
- 件数だけを追うと、質より数を取りにいく動きが起きやすくなります。商談になった率や成約までを同じ画面で見られるようにします。
- 録画は相手の了承を得てから行います。商談の冒頭で録画の目的を伝え、保存場所・保存期間・見られる人も社内で決めておきます。
- 文字起こしは、社名・製品名・人名などの固有名詞を間違えやすくなります。用語の一覧をAIに渡しておき、金額や日付など重要な数字は人が確かめます。
- ナレッジは、貯めただけでは使われません。次の商談前の事前資料のように、使う場面で自然に目に入る形にします。
自社で始めるなら最初の一歩
今の日報・週報の項目を書き出し、それぞれの数字がどこから取れるか(ツールの記録か、本人の手入力か)を分けてみてください。ツールから取れる数字は自動集計に回し、手入力でしか取れない項目は本当に必要かを見直します。上の4点(目的・範囲・見る人・評価への使い方)を文書にしておくと、社員への説明にそのまま使えます。
商談の分析は、直近の商談の録画か録音を1本用意して文字起こしをし、決めた項目でAIに整理させるところから始められます。担当者の記憶やメモと比べると、AIに任せられる範囲と、人が見るべき点が分かります。
担当者より
この支援でまず考えたのは、集めた数字を何に使うかでした。担当者ごとの件数が並ぶ画面は、使い方を誤ると監視や、件数だけの評価につながります。報告の手作業をなくすこと、支援が必要な担当者を早く見つけることを目的として言葉にし、数字は面談で背景を聞く材料にする。この使い方を、仕組みと同じくらい重視しました。
録画の分析でも、AIの抽出をそのまま正解にはしていません。「刺さった」「ネガティブになった」はあくまで候補で、チームで使うトークを選ぶのは人です。人数の多い組織ほど、うまくいったトークを個人の中に閉じ込めない仕組みの価値は大きいと考えています。
株式会社クロスタ 担当コンサルタント