課題(ヒアリングで分かったこと)

この支援先では、複数販路の受注処理と発送処理を、毎日3時間かけて手作業で行っていました。商品仕様の確認、顧客情報の照合、発送ラベルの発行など、1件ずつは小さな作業の積み重ねです。モールごとに画面もデータの形式も違うため、確認漏れや転記ミスも起きやすい状態でした。

作った仕組みと画面イメージ

作った仕組み

  • 受注の集約 — 各モールの受注をAPIで自動で集め、1か所にまとめる
  • 仕様・在庫のチェック — 商品の仕様と在庫を自動でチェックし、合わない受注に印を付ける
  • 出荷書類の自動作成 — チェック済みの受注から、発送ラベルと出荷指示書を作る

表計算のスクリプト(Google Apps Script)と生成AIを組み合わせ、受注の集約から出荷の書類づくりまでを1本の流れにしています。

受注管理の画面イメージ。4つの販路から取り込んだ142件の受注のうち、問題なしが134件、要確認が8件。受注の一覧では在庫不足・色の指定なし・のしの依頼・重複の疑い・住所の不備・大型商品の配送に印が付き、右側に在庫不足の受注の確認画面と対応の候補、下に出荷書類の作成状況が表示されている
受注一覧の画面の例。チェックで問題のなかった受注は出荷書類まで進み、印の付いた受注だけを人が確認します。画面はイメージです(データは架空)

チェックのルール(何を自動で見て、何を人に回すか)

チェックの中身は、「自動で見ること」と「人に回す条件」の組み合わせで決めます。下は、ルールの立て方を示す例です。実際の項目は、商品と販路に合わせて決めます。

表は横にスクロールできます

チェック自動で見ること人に回す条件人の対応
在庫注文数と、引き当てられる在庫の数在庫が注文数に足りない分けて送るか、入荷を待つかを決めて案内する
商品の仕様注文の商品・色・サイズが、商品の登録内容と合うか登録にない指定、指定の漏れお客様に確認する
備考欄備考の有無と内容(のし・包装・日時の指定など)決まった対応で処理できない依頼対応できるかを判断する
重複の疑い同じ届け先・同じ商品の注文が短い間隔で続いていないか重複の疑いがある意図した注文かを確かめる
届け先住所の形式(番地の有無、郵便番号との一致)形式に合わない住所お客様に確認する
配送方法商品のサイズ・数量と配送方法の組み合わせ通常の配送方法で送れない配送方法を選び直す
問題なし上のどれにも当たらないなし出荷前にまとめて確認する

在庫や仕様の照合のように決まった条件で判定できるものはスクリプトで判定し、備考欄のように自由に書かれた文章の読み取りには生成AIを使う、と分けておくと、印が付いた理由を説明しやすくなります。

データの流れ(入力・AI・人の分担)

表は横にスクロールできます

段階と入力仕組み・AIがやること人がやること
受注の集約入力: 各モールの受注データAPIで受注情報を自動で集め、1か所にまとめるなし(自動)
チェック入力: 受注と商品の仕様・在庫商品仕様と在庫を自動でチェックし、合わない受注に印を付ける印の付いた受注を確認し、対応を決める
出荷の準備入力: チェック済みの受注発送ラベルと出荷指示書を自動で作る内容を確認して出荷する

効果

毎日3時間の手作業が、20分の確認作業になりました。人が見るのはチェックで印が付いた受注と出荷前の確認になり、ミスの発見も早くなっています。

※効果は業務内容・体制により異なります。

つまずきやすい点・注意点

  • 仕様のチェックは、商品の登録内容が正しいことが前提です。新商品や仕様の変更を登録する手順を先に決めます。
  • モールごとに、受注データの項目名や、色・サイズの書き方が違います。取り込むときに表記をそろえる対応表を作ります。
  • モール側のAPIやCSVの仕様は変わることがあります。取り込んだ件数を毎回確認し、件数が合わないときに気づけるようにします。
  • 氏名や住所は個人情報です。AIに渡すのは判定に必要な項目だけにし、使うサービスの契約内容を確認します。

担当者より

受注処理の自動化で大事にしたのは、全部を自動にしようとしないことです。決まった条件で判定できる受注は仕組みに任せ、判断に迷う受注には印を付けて人に回す。毎日の作業が20分の確認で済むのは、人が見る受注を絞り込めたからです。

もう1つ意識したいのは、印が付いた理由が一目で分かることです。「なぜ要確認なのか」が分かれば担当者はすぐに対応を決められ、同じ理由の印が続けば、ルールや商品の登録内容を直すきっかけになります。

株式会社クロスタ 担当コンサルタント

自社で始めるなら最初の一歩

1日分の受注を例に、担当者が確認している項目をすべて書き出し、「決まった条件で判定できるもの」と「人の判断が要るもの」に分けてみてください。前者がそのままチェックのルールの候補になります。次に、各モールの受注データ(CSV)を1つの表にまとめ、印を付けるところまでをAIで試します。

このフォルダにある昨日分の各モールの受注CSVと、商品一覧・在庫表を読んでください。 1. 受注を1つの表にまとめる(受注番号・販路・商品・色やサイズ・数量) 2. 在庫が足りない受注と、商品一覧にない色やサイズが指定された受注に印を付け、理由を書く 3. 印を付けた受注と付けなかった受注の件数を出す 元のファイルは変更しないでください。お客様の氏名と住所の列は読み込まないでください。