課題

この支援先では、顧客への提案の準備に数日かかっていました。この種の業務では、図面をもとに配置を考えて案を描き、顧客に伝わるようにイメージ図に起こす、という作業になりがちです。打合せで要望を聞いてから、案を形にして見せるまでに日数が空きやすくなります。

配置の案は、1つ描くだけでも手間がかかります。複数の案を並べて比べたくても、準備の時間を考えると案の数を絞らざるをえない、ということも起こりがちです。

作った仕組みと画面イメージ

作った仕組み

  • 図面の読み取り — 図面をAIが読み取る
  • 配置案の作成 — 読み取った図面から、効率のよい配置案の図面をAIが自動で作る。最終確認と調整は設計者が行う
  • 3Dのイメージ図 — 配置案を3Dに起こしたイメージ図を、短時間で仕上げる

案を作るのはAI、どの案を採用して仕上げるかを決めるのは設計者という分担です。図面の読み取り、配置案、3Dのイメージ図は、それぞれ前の段階の結果を使います。読み取りで誤った寸法は配置案にも3Dにも引き継がれるため、最初の読み取りの確認がいちばん大切です。画面は次のようなイメージです。

配置案の画面イメージ。架空の事務所の改修について、図面の読み取り結果と条件(席12・打合せ室1・収納を壁際)が表示され、考え方の異なる配置案A・B・Cの平面図と、席数・通路の最小幅・収納の長さが並んでいる。下に、選んだ案Aを3Dに起こしたイメージ図と、寸法の確認・避難経路・設備との取り合い・お客様の要望との差といった設計者の確認項目が並んでいる
配置案の画面の例。読み取った図面をもとに考え方の違う配置案を並べ、選んだ案の3Dイメージと、設計者の確認項目を表示しています。画面はイメージです(データは架空)

AIが出した配置案の比較(例)

配置案は、考え方の違う案を並べて出させると、打合せで比べやすくなります。下は、配置案を比べる表の例です。

表は横にスクロールできます

案配置の考え方(例)良い点(例)設計者が確かめること
案A席を窓側にまとめ、打合せ室を入口の近くに置く来客の動線と、執務の動線が分かれる窓側の日射と空調の効き
案B席を島型に並べ、中央に共有の作業台を置く席どうしの距離が近く、相談しやすい通路の幅と避難経路
案C部署ごとに区画を分け、収納を壁際に寄せる収納を多く取れる柱や設備との取り合い、区画ごとの明るさ

※架空の事務所の改修を例にした比較です。配置の対象や条件は案件ごとに異なります。

比べる観点は、案件ごとに先に決めておきます。席数や収納の量のように数えられるものと、明るさや動線のように設計者が見て判断するものを分けておくと、AIに出させる項目と、設計者が打合せの前に確かめる項目がはっきりします。

データの流れ(入力・AI・人の分担)

表は横にスクロールできます

段階と入力AIと仕組みがやること人がやること
図面の読み取り入力: 図面図面を読み取る読み取った寸法や条件が、図面と合っているかを確かめる
配置案の作成入力: 読み取った図面と条件効率のよい配置案の図面を作る案を選び、最終確認と調整をする
3Dのイメージ図入力: 選んだ配置案3Dに起こしたイメージ図を作るイメージ図の内容を確かめる
提案入力: 配置案と3Dのイメージ図なし打合せのその場で、顧客に提案する

※ 人の分担は、この種の仕組みでの一般的な例です。

この事例の仕組みとは別に、当社の公開デモでも近い考え方を試せます。駐車場レイアウトの自動設計デモでは、敷地の形に対して区画と通路の並べ方を何通りも試して配置を出す流れを、建物を組み上げる3Dビューアでは、建物を部材単位の3Dで確かめる見せ方を体験できます。

効果

提案の準備に数日かかっていたものが、打合せのその場で顧客に提案できるようになりました。配置案と、3Dに起こしたイメージ図を短時間で用意できるため、完成の姿を見せながら提案できます。

※効果は業務内容・体制により異なります。

つまずきやすい点・注意点

  • 図面の読み取りでは、縮尺・寸法・記号の読み違いが起こりえます。読み取った結果を図面と見比べる工程を残します。
  • 読み取りに使う図面が最新の版かを確かめます。改修の前後など図面が複数ある案件では、古い版から案を作ってしまうことがあります。
  • AIの配置案が、法規や構造、設備の条件をすべて満たしているとは限りません。避難経路や設備との取り合いなどは、設計者が確認して調整します。
  • 3Dのイメージ図は、完成を約束するものではありません。素材の質感や色が実物と違って見えることがあると、顧客に伝えておきます。
  • 顧客の図面は機密の情報です。使うAIサービスでのデータの扱いを自社の契約形態に照らして確認し、顧客との契約で図面の扱いに決まりがないかも確かめます。
  • 配置案や3Dのイメージ図を顧客に渡すときは、どこまでが検討用の案かを資料に書いておきます。
  • その場で案を出せるようになると、案が多すぎて顧客が迷うこともあります。打合せで見せる案の数と、比べる観点を先に決めておきます。

担当者より

この支援で大切にしたのは、AIが作るのは「案」であり、図面の責任は設計者にあるという線引きです。配置案の図面を自動で作れるようになっても、最終確認と調整は設計者が行います。法規や構造、顧客の使い方まで踏まえて案を仕上げるのは、設計者の専門性そのものです。

そのうえで、準備にかかる時間が数日から打合せのその場に縮まったことには、時間の短縮以上の意味があると考えています。顧客の反応を見ながら案を比べられれば、要望もその場で具体的になります。AIには案を出す速さを、設計者には案を選び仕上げる判断を、という分担を崩さないことを意識しています。

株式会社クロスタ 担当コンサルタント

自社で始めるなら最初の一歩

最初は、過去の案件の図面1枚で、読み取りの精度を確かめるところから始めます。設計者が描いた案と比べると、AIに任せられる範囲が分かります。

  1. 過去の案件から図面を1枚選び、部屋の名前・寸法・扉や窓の位置を一覧にさせて、図面と見比べる
  2. その案件の条件を書き出し、配置の考え方が異なる案を2〜3通り出させる
  3. 設計者が実際に描いた案と比べ、AIの案で使えるところと、設計者が直すところを分ける
この図面(PDF)を読み、次のことをしてください。 1. 部屋ごとの名前・おおよその寸法・扉と窓の位置を表にする 2. 読み取れなかった箇所と、読み取りに自信がない箇所を挙げる 3. 次の条件で、配置の考え方が異なる案を3つ文章で示す(条件: 席数12、打合せ室1、収納は壁際) 元のファイルは変更しないでください。